「ご当地電力はじめました!」(高橋真樹)①

小規模な発電をその地域にあった方法で行うということ

「ご当地電力はじめました!」
 (高橋真樹)岩波ジュニア新書

理科教師である私は、
電力をはじめとするエネルギー問題には
常に関心を持ってきました。
特に再生可能エネルギーについては
勉強してきたつもりです。
でも、本書を読んで、
まだまだよくわかっていないこと、
理解が十分でなかったこと、
間違って捉えていたことが、
たくさんあったことに気付きました。

再生可能エネルギーによる発電施設は、
小規模なものにしかならないということ。
これは中学校の教科書にも
記載されています。
そしてそこでは「小規模であること」が
重大な欠点のように
捉えられていた時期がありました。

そうではありません。
むしろ大規模発電の方が
エネルギー効率としては
無駄の多い発電なのだそうです。
「大規模の方が
効率がよい」という考え方は、
経済的な面、もっと言うと
電力会社の収益面からの
発想だったのでしょう。

小規模な発電を、
その地域にあった方法で行い、
それを組み合わせて
全体でバランスをとる。
それが必要なのだということに、
本書を読んで気付かされました。

9月の北海道電力での
ブラックアウトは、
考えてみると苫東厚真火力発電所の
一極集中が原因でした。
老朽化した石炭火力発電所に
多くを依存していた結果が
招いたのです。

一部の知識人は、
一極集中を認めた上で、
その原因を泊原発の停止に結びつけ、
「だから再稼働すべき」という結論を
導き出しています。
それはおかしいのではないでしょうか。
これまで安全性を無視して原発に依存し、
老朽化した他の発電所に
投資することをせずに
利益をむさぼってきた結果なのですから。

私たちの国は3.11を経て、
原発事故の恐ろしさを
身に染みて感じたはずです。
福島にはいまだに
帰還のめどが立っていない方が
まだまだたくさんいるのです。
放射能もしくは放射性物質は
まだまだ放出され続けています。
しかし、事故から7年も経つのに、
電力会社は
いかに原発を再稼働するかに腐心し、
他の発電方法を含めた
電力需給バランスを
考えようとしていないのは
腹立たしいかぎりです。

こうした問題を、
岩波ジュニア新書という
中高生にむけた出版物で
正しいあり方を知ること自体、
異様なことだと思います。
新聞をはじめとするマスコミは
一体何を報道しているのでしょうか。
これからの時代をつくる中学校3年生に
強く薦めたい一冊であるととともに、
まずは大人が
じっくり読むべき一冊といえます。

(2018.12.5)

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